奥の細道句抄旅

  

草の戸も住替る代ぞひなの家 (深川)

行春や鳥啼魚の目は泪 (千住)

あらたうと青葉若葉の日の光
 (日光)

剃捨て黒髪山に衣更 (日光)

暫時は瀧に籠るや夏の初 (日光)

かさねとは八重撫子の名なるべし   曽良(那須野)

05夏山に足駄を拝む首途(かどで)かな  (黒羽)

06木啄(きつつき)も庵(いお)はやぶらず夏山木立 (雲岸寺)

野を横に馬牽(ひ)きむけよほととぎす  (殺生石)

田一枚植ゑて立ち去る柳かな   (蘆野の里)

卯の花をかざしに関の晴れ着かな    曽良(白河の関)

風流の初めやおくの田植歌  (須賀川)

世の人の見付けぬ花や軒の栗   (須賀川)

早苗取る手もとや昔しのぶ摺り   (信夫の里)

笈(おい)も太刀も五月にかざれ紙幟(かみのぼり) (医王寺)

笠島はいづこ五月のぬかり道   (笠島)

⑫桜より松は二木を三月越し   (武隈の松)

あやめ草足に結ばん草鞋(わらじ)の緒   (仙台)  
 
松島や鶴に身をかれほとゝぎす   曽良(松島)

夏草やつはものどもが夢の跡  (平泉)    

卯の花に兼房みゆる白毛(しらが)かな   曽良(平泉)

五月雨の降りのこしてや光堂   (平泉)

蚤虱馬の尿(しと)する枕もと  (尿前の関)

涼しさをわが宿にしてねまるなり  (尾花沢)

這ひ出でよ飼屋(かいや)が下のひきの声  (尾花沢)

眉掃きを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花 (尾花沢)

蚕飼ひする人は古代の姿かな      曽良(尾花沢)

閑かさや岩にしみ入る蝉の声   (立石寺)

五月雨を集めて早し最上川   (最上川)

ありがたや雪をかをらす南谷   (出羽三山)

涼しさやほの三日月の羽黒山   (出羽三山)

雲の峰いくつ崩れて月の山   (出羽三山)

語られぬ湯殿にぬらす袂かな   (出羽三山)  

湯殿山銭ふむ道の涙かな    曽良(出羽三山)

あつみ山や吹浦(ふくうら)かけて夕すずみ (酒田)

暑き日を海に入れたり最上川   (酒田)

象潟や雨に西施がねぶの花   (象潟)

潮越や鶴はぎぬれて海涼し   (象潟)

象潟や料理何くふ神祭    曽良(象潟)  

(あま)の家(や)や戸板を敷きて夕涼み 低耳(象潟)

波こえぬ契りありてやみさごの巣   曽良(象潟)

文月や六日も常の夜には似ず   (越後路)

荒海や佐渡によこたふ天河(あまのがわ) (越後路)
 
一家に遊女もねたり萩と月 (市振)

わせの香や分入右は有磯海 (那古の浦)

塚も動け我泣声は秋の風 (金沢)

秋涼し手毎にむけや瓜茄子 (金沢)

あかあかと日は難面もあきの風 (金沢)

49 しほらしき名や小松吹萩すゝき (小松)

50 むざんやな甲の下のきりぎりす (小松)

石山の石より白し秋の風 (那谷寺)

山中や菊はたおらぬ湯の匂 (山中温泉)

行ゝてたふれ伏とも萩の原 曾良 (山中温泉)
 
今日よりや書付消さん笠の露 (山中温泉)

終宵秋風聞やうらの山 (全昌寺)

庭掃て出ばや寺に散柳 (全昌寺)

物書て扇引さく余波哉 (天龍寺)

月清し遊行のもてる砂の上 (敦賀)

名月や北国日和定なき (敦賀)

60 寂しさや須磨にかちたる濱の秋 (色の浜)

61 波の間や小貝にまじる萩の塵 (色の浜)
 
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ 
 (大垣)











作成・2020年2月15日 更新・2022年7月28日